3.消費税の計算

2017年4月1日 現在

3-1 課税標準

課税標準(第28条)
課税資産の譲渡等に係る消費税の課税標準は、課税資産の譲渡等の対価の額とする。
(輸入の場合は関税課税価額+関税+消費税以外の個別間接税が課税標準)

  • 「対価の額」に消費税相当額は含まない
  • 「対価の額」には対価として収受し、または収受すべき一切の金銭又は金銭以外の物若しくは権利その他の経済的な利益の額とする(代物弁済・ 負担付贈与・ 現物出資)
  • 家事消費、役員に対する贈与・ 低額譲渡は課税標準に含める(資産の価額)
  • 源泉徴収の対象となる報酬料金
    • 消費税を別枠請求している時は、消費税抜きで源泉可
      報酬100,000円、消費税8,000円と請求がある時は10,210円源泉でよい
  • 個別消費税の取扱(消費税の課税標準に含めるか)
    含める    酒税・ たばこ税・ 揮発油税・ 石油税・ 石油ガス税等
    含めない   軽油取引税・ ゴルフ場利用税・ 特別地方消費税・ 入湯税  

 

  • 課税資産の譲渡等(法2九)
    資産の譲渡等のうち、第6条第1項の規定(非課税)により、消費税を課さないことされるもの以外をいう。

このまま読むと「輸出取引」は「課税資産の譲渡等」に含まれるように読めるが、第7条で「・・・消費税を免除する」とされているため、税額計算上「課税資産の譲渡等」から除く。

  「課税資産の譲渡等」のうち「輸出取引」  ---> 0%課税
  「課税資産の譲渡等」のうち「その他の取引」---> 6.3%課税

 

3-1-1 「資産の譲渡等」の時期

  • 原則的に所得税法・ 法人税法の取扱と同じ
  • 長期割賦販売等(通9-3-1~7・ 9-4-1~2)
    所得税・法人税で採用している場合:これらの基準と引渡基準の選択可
    所得税・法人税で採用していない場合:引渡し基準のみ可
  • 現金基準(法18)個人のみ
    所得税で採用している場合:これらの基準と引渡基準の選択可
  • 仕入れ側では相手の基準と関係無く、引渡しの時点で仕入れに係る消費税を全額控除できる

 

3-2 税率

  国税    6.3% (消費税)
  地方税  1.7% (地方消費税)
  合計    8%

  • 端数処理
    課税標準は合計額の1000円未満切捨て
    消費税額は税額控除後の金額の100円未満を切捨て

 

3-3 税額控除

仕入れに係る消費税額の控除(第30条)
事業者が、国内において課税仕入れを行った場合、当該課税仕入れを行った日の属する課税期間の課税標準額に対する消費税額から、当該課税期間中に国内において行った課税仕入れに係る消費税を控除する。

保税地域から貨物を引き取った場合、当該課税貨物を引き取った日の属する課税期間の課税標準額に対する消費税額から、当該課税期間中に行った保税地域から引き取った課税貨物に係る消費税を控除する。

※課税仕入れ(法2十二)
事業者が、事業として他の者から資産を譲り受け、若しくは借り受け、又は役務の提供を受けること

  • 事業者(免税業者)からの仕入れ、消費者からの仕入れを問わず、その者が仮に事業として行った場合に、課税資産の譲渡等に該当するものはすべて含む
  • ただし輸出免税の対象となるものは除く
  • 給与所得を対価とする役務の提供を除く

 

3-3-1 「課税仕入れ」に係る消費税

  • 当該課税仕入れに係る支払対価の額に108分の6.3を乗じて算出した額
    税込課税仕入れ等の額×(6.3% ÷ 108%)=「課税仕入れ等の税額」

<単純に108分の6.3でよいか>

  • ゴルフ代は、ゴルフ場利用税を引いた額の108分の6.3
  • 売手が納めることになる印紙税等は含めて課税対象のため、たとえば銀行の振込手数料はそのまま108分の6.3

<区分計算が必要>

  • 土地と建物を一括購入した時、合理的に区分されていない時は、
  • リース料は明記された金利・ 保険料以外の部分の108分の6.3

<その他間違いやすいもの>

  • 郵便切手、物品切手は継続経理を条件に購入時に課税仕入れとしてよい(通11-3-7)
    ただし消費されないもの(商品券)の贈与等は除く
  • 金銭寄付は対象外だが、現物寄付はその購入が課税仕入れのときは控除対象(通11-2-17)
  • 出張旅費・ 宿泊費・ 日当/通勤手当/現物給付--->課税仕入れとしてよい(通11-1-1~3)
  • 保険金による資産の取得は課税仕入れの適用可(通11-2-10)
  • 短期前払費用は所得税・ 法人税の取扱と同じで良い(通11-3-8)
  • 会費/組合費は経常的費用の場合は対象外(通11-2-6)
  • 返還されない入会金(ゴルフクラブ等)は課税仕入れ(通11-2-7)

 

3-3-2 「課税仕入れ等」の時期

  • 割賦基準(通11-3-2)
    仕入れ側では相手の基準と関係無く、引渡しの時点で仕入れに係る消費税を全額控除できる
  • 減価償却資産(通11-3-3)減価償却資産は、引渡しの時点で仕入れに係る消費税を全額控除できる
  • 未成工事支出金(通11-3-5)
    原則  課税仕入れをした日
    ただし 目的物を引渡した日も可(継続適用を条件)
  • 建設仮勘定原則
    一部の引渡しがあったらその日
    ただし 全部の引渡しのあった日とすることができる

 

3-3-3 非課税売上がある場合の「課税仕入れ等の税額」の按分

  (A)課税売上割合が 95%以上の場合は全額控除できる。
  (B)上記以外は次の按分計算が必要

平成24年4月1日以後開始事業年度より、当課税期間の課税売上高が5億円超の場合には、課税売上割合が95%以上でも全額控除できず、按分計算しなければならない

  【個別対応方式】
  「課税仕入れ等の税額」を次のように区分する
  (イ)課税売上に対する仕入税額
  (ロ)非課税売上に対する仕入税額
  (ハ)課税売上と非課税売上に共通する仕入税額
  (イ)+(ハ)*課税売上割合=控除税額
  【比例配分方式】
  「課税仕入れ等の税額」*課税売上割合=控除税額

  • 「課税売上割合」とは「課税期間中に国内において行った資産の譲渡等の対価の額の合計額のうち同期間中に国内で行った課税資産の譲渡等の対価の金額の合計額の占める割合として政令で定める」
  • 課税売上割合の計算方法(令48)
    (2)/(1)
(1) 当該事業者が、当該課税期間中に国内において行った資産の譲渡等の対価の額(消費税は含まない)の合計額から、当該課税期間中に国内において行った資産の譲渡等にかかる対価の返還等の金額(消費税は含まない)の合計額を控除した額
(2)

当該事業者が当該課税期間中に国内において行った課税資産の譲渡等の対価の額の合計額から
(イ)-(ロ)の金額を控除した額

    (イ) 課税期間中に行った売上に係る対価の返還等の金額(輸出取引等の返還含む)
  (ロ) 課税期間中に行った売上に係る対価の返還等の金額に係る消費税額

   
課税売上割合=
(A)課税資産の譲渡等(純額、税抜き)
  (A)課税資産の譲渡等+(B)非課税資産の譲渡等(純額、税抜き)

 
・非課税取引には次のものが含まれているので調整する
  支払手段の譲渡等       (B)に含めない
  現先取引           (B)には差額のみ含める
  金銭債権           (B)には譲渡対価の5%のみ含める(平成26年4月1日以後)
  有価証券           (B)には譲渡対価の5%のみ含める
・「個別対応方式」を採用する場合、「課税売上割合」にかえて「課税売上割合に準ずる割合」を使用することができる。
 ただし「課税売上割合」が95%未満かどうかの判定には使用できない。(令47,通11-5-9)
要件

(1) 当該割合が当該事業者の営む事業の種類又は当該事業に係る販売費、一般管理費その他の費用の種類に応じ合理的に算定されるものであること。
(2) 税務署長の承認を受けたものであること。
  • 単一の割合を適用する必要なし(事業所ごと、費目ごと)(通11-5-8)
  • 「本来の課税売上割合」と「準ずる割合」の併用は可
  • 準ずる割合を適用
         消費税課税売上割合に準ずる割合の適用承認申請書(法30(3))
  • 準ずる割合をやめる
         消費税課税売上割合に準ずる割合の不適用届出書(法30(3))

  • 承認を受けた課税期間から準ずる割合を適用する。
    不適用届出書を提出した課税期間から「本来の課税売上割合」を適用する。

 

3-3-4 調整対象固定資産の調整

  • 調整対象固定資産 税抜き100万円以上のもの(令5)
  • 課税売上割合が著しく変動した場合(令53)

  通算課税期間    取得時を含む3課税期間
  通算課税売上割合  通算課税期間を通しての課税売上割合
  「著しく変動」とは
  仕入時の課税売上割合=X
  通算課税売上割合  =Y

  |X-Y|
  ----- ≧50%  かつ  |X-Y|≧5%
    X
(イ) 課税売上割合の著しい変動(法33)
固定資産のうちについて、比例配分により仕入れ税額控除を行った場合、その時以降著しく課税売上割合が変動した時は、第3年度において調整する。

  仕入れ税額に加算する金額
  =(課税対象基準税額×通算課税売上割合)-当初の仕入れ控除税額
(ロ) 転用(法34)
    転用時期         1年以内  2年以内  3年以内
  (A)課税 --->非課税   全額    2/3   1/3
  (B)非課税--->課税    全額    2/3   1/3

  (A)の場合転用した時の仕入控除税額より控除
  (B)の場合転用した時の仕入控除税額に加算

 

3-3-5 納税義務の免除と棚卸資産(法36)

免税業者が課税事業者となった場合
  前期末の棚卸資産に係る消費税額を課税期間の仕入等の税額とみなす
課税事業者が免税業者となる場合
  当期末の棚卸資産に係る消費税額を課税期間の仕入等の税額から控除

 

3-3-6 貸倒れに係る税額の控除(法39)

事業者が国内において課税資産の譲渡等を行った場合において、当該課税資産の譲渡等の相手方に対する売掛金その他の債権につき貸倒れ等が発生した場合、当該領収できなくなった日の属する課税期間の課税標準から、当該領収できなくなった課税資産の譲渡等の税込価額に係る消費税の合計額を控除する。

  • 貸倒れの要件は法人税等と同様(令59)
  • 貸倒引当金への繰入はだめ
  • 貸倒額は「課税資産の譲渡等」に係るものと、「その他の資産の譲渡等」に係るものに区分する。
    困難な時は各々の売掛金の比で按分(通14-2-3)
  • 免税事業者であった期間に行った課税資産の譲渡等に係る債権が貸し倒れたときは、貸倒れに係る税額の控除の適用はない。(通12-2-4)